地味な印刷物

2011.07.18

「本はなくなりませんよ。いくらインターネットが発達してもね」出版関係者と本の将来について語ったあと、必ずみんながこう言ってウィンクして見せる。あたかもインターネットの爆発的発展などしょせんコップの中の嵐なのだと、ことさらに強調するように。おそらくそれは真実だろう。すべての本が十年や二十年のタイムスパンでなくなるということは、少なくともいまは考えられない。だが、思わぬところから本(印刷物)がなくなりつつあることも事実である。地方紙の片隅に小さな記事が出ていた。「「公報L83年目の。変身”京都市、紙発行やめネット発信へ」。紙媒体からオンライン媒体への変化を報じる記事だった。公報は、国でいう官報に当たる。地方自治体の公式な情報、条例の制定や入札の公告などを載せるだけの、一般の目にはほとんど触れない地味な印刷物だ。だが、なくてはならないものだった。公報がなくなるなどということは誰も想像していなかった。ましてや前例を重んじるお役所のこと、百年近くも前例を踏襲してきた印刷物を廃止できるはずはないと思っていたのだ。しかし、いきなりの廃止である。ひとつには悪化を続ける自治体財政に鑑み、経費節減を目指したということもあるようだ。
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